はまはらのフィギュアスケート感想記

フィギュアスケート観戦が趣味です。大好きな選手のこと、観戦の感想などを書いていきます。特に好きなスケーター☆宮原知子さん/町田樹さん/ネイサン・チェン選手/鈴木明子さん/エリザベータ・トゥクタミシェワ選手…他多数

まだ終わらない旅(町田樹・選手編)

こんにちは。はまはらです。

大好きなスケーターについて語るコーナー(?)第二弾は町田樹くんです。
あまりにも長くなりそうだったので選手編とプロ編に分けます!(笑)

ちなみに第一弾の宮原知子編はこちら。
hamahara3.hatenablog.com

町田くんを知ったのは2012年のこと。その頃の私は、好きな選手の演技や話題になった演技を動画でチェックするくらいで、シーズン通してフィギュアスケートを見ていませんでした。
動画巡りで偶然出会ったのが、当時の町田くんがスケートアメリカで演じたフリープログラム『火の鳥』。
https://youtu.be/uczj888qOIo
衝撃的でした。本当に。
これまで自分の中にぼんやりと存在していたフィギュアスケートの概念というものを、根底から覆されたような気さえしました。
そこにいたのは、時に妖しく、時に猛々しく、踊り狂い、飛び回る火の鳥
生々しいくらいの存在感。
火の鳥というものが実在するならば、間違いなくこんな姿をしている、そう思わされる演技でした。
いやもう、このプログラム好きすぎて逆に語りづらいです。
獲物を探し狙い定めるような首の動き、細かく刻まれるステップと旋回するような動作、大きく胸を張る仕草、キャメルスピン中の羽ばたきと優雅なスパイラル、羽をたたむ姿、コレオシークエンスはまるで命を燃やし尽くさんばかりの勢い。
生命の塊のような作品に飲まれて、取り憑かれたみたいに何回も何回も繰り返し見ました。
そのときの感覚は、今でも思い出せるくらい。
「この選手ヤバい!」
という物凄い驚きのなか、過去の動画も必死になって漁りました。
こういうとき、昔から見ている人の存在っていうのは本当にありがたいですね。(マジで)
小さな大会やアイスショーの演技もたくさん記録されていましたから。

そこで見つけた過去のプログラムで、お気に入りをいくつか。
2009年全日本選手権のショート『タンゴ・ジェラシー』。
https://youtu.be/SeaKt-rkVO8
町田くんの踊りの上手さを知ったプログラムです。
前半にジャンプを3つ跳ぶわりと偏った構成ながら、見てる人を飽きさせないんですよね。
それはひとえに彼の踊りが音楽とピッタリ合っているからにほかなりません。
多彩な手の表現が特に好き。
ラストポーズも決まってます!
このショートと、フリーの演技で町田くんは4位に入り、バンクーバー五輪の第一補欠となったんですよね。
間違いなく競技人生の転機だったと思います。

2010年四大陸選手権のフリー『カサブランカ』。
https://youtu.be/AvKCjTXdbdg
シニアの国際大会で初めて銀メダルを獲得した演技。
このプログラムは当時の町田樹というスケーターの魅力が、たくさん詰め込まれていると思います。
軽快な曲で踊りの楽しさを見せて、中盤から切なさやあふれる想いをスケーティングに乗せていく。
恋に破れうなだれて、届かない人に手を伸ばして駆け出していくような振り付けがすごく好き。
このときから悲恋の雰囲気が似合ってるんだよなあ。

2010年のエキシビションハッピーフィート』。
https://youtu.be/xTfsc4WB84I
これ衣装がすごくかわいいんですよね!
なんか、少年って感じで好きです。
楽しくてハッピーなムードのあるプログラムなのに、どこかもの寂しさや切なさを感じるところもあります。(Somebody To Loveの歌詞とも合っていますよね)
帽子の使い方も面白いなあ。最後はぶん投げてニースライディング! 爽快なんだけどちょっとビターエンドっぽい雰囲気が素敵です。

2012年四大陸選手権のショート『黒い瞳』。
https://youtu.be/AOGshKryKhg
最高。(最高)
もう、これに尽きますよね。パーフェクトすぎる。
まずなんといってもジャンプが全部良い!
3Aの飛距離やばいですね。これは今でもGOE5を連打しちゃうやつ。(私が)
ピアノの音が鳴った途端、もうその世界に引き込まれてしまいます。
振り付けも素晴らしいですよね。ミヤケンマジ神の所業。
ジャンプの前の振りとか、細かいポージングとか、スピンとスピンの間のトランジションとか。
そしてラストの畳み掛ける鬼ステップ! これぞ黒い瞳の醍醐味! 早くなるテンポに合わせてギュンギュン滑り、刻まれるステップから一時も目が離せなくなります。
フィニッシュのポーズと豪快なガッツポーズは、まるでセットになってるみたい。
もちろん町田くん本人もかなりの手応えがあったようで、キスクラでは「一番良い黒い瞳ができた」と話していましたね。
あーリアルタイムで見たかったなあ!

さて、お話を2012年スケアメに戻します。
火の鳥の素晴らしい演技で、町田くんはこのときGPS初の銅メダルを獲得しました。
当時22歳。スケーターとしてはかなり遅咲きの選手ですよね。
いつももう少しのところで届かず、涙を飲んできたことは想像にかたくありません。
だからこそこの結果は嬉しかったでしょうね。

同年の中国大会。
初優勝を果たしたときのショート『F.U.Y.A』は圧巻でした。
https://youtu.be/_qegcJgXKn4
これ振り付けがすごく面白いですよね! 独特!
ランビ先生とのタッグなんですけど、良い意味であんまりランビ先生っぽくないなあと思ったプログラム。
流れと音ハメ命みたいな作品なので、ミスったら終わりな感じがあると思うんですが、このときの演技はパーフェクトでカチッとハマってる。
いやーカッコイイ!(居酒屋テンション)

初のGPF進出も決めて、このままグワーッと上がっていく……ともいかず、このシーズンの後半は苦しい戦いでした。
全日本9位は本当にショックだったし悔しかったなあ。
年明けも調子は上がらず、坊主になってる噂を聞いたりしながら「大丈夫かな」なんて思ってました。

それだけに、2013年のスケアメでの演技は前年を超える大きな衝撃でした。
4回転ジャンプを入れたクリーンで美しいショートに、継続プロながら力強さを増したフリー。確かな自信を手に入れたように見えるインタビュー。
何もかもが変わっていて、「オリンピックあるかも」と、このとき初めて思いました。
思わぬダークホースの登場に、テレビがこぞって取り上げ始めたのもこの時期からだったかな。
大西コーチのもとで基礎を磨き直して、メンタル面も強化するために有言実行を誓って……町田くんはGPS2戦目のロシア大会でも本調子でないながら優勝を果たします。
私のテンションも上がって、ファイナルで去年のリベンジだ、なんて思ってたんですよね。
でもGPFでのショートとフリーを見たあと、初めて気づかされました。
町田くん、変わったんじゃなくて、必死に変わろうとしてるんだ、と。
それまではあまりにも自信満々で強気だったから見えていなかったけど、今シーズンの町田くんはリンクを降りたあともずーっと強い自分を演じてたんだと、フリーを終えた瞬間、彼が両手で顔を覆ったときに理解しました。
熾烈な争いの中で這い上がるために、いったいどれだけのプレッシャーを自分にかけ続けてきたんだろう。
その姿から、オリンピックにかける並々ならぬ覚悟と決意を感じてしばらく涙が止まらなかったのを覚えています。
ファイナルときの火の鳥は、見る度に泣いてしまうなあ。

そして全日本選手権
男子ショートプログラムの日、私は仕事だったのですが、なんとかギリギリリアルタイムで見られる時間でした。
結局家には間に合わないとわかったため、見たのは地元の駅のホーム。ベンチに座ってイヤホンをしてスマホワンセグをつけて、寒さと緊張で震えつつ、祈りながら見ていたっけ。(笑)
最後から2番目のグループの一番滑走。ちょうどその6分間練習から生放送でした。
もう半端じゃない緊張感と緊迫感で、心臓がうるさくってこっちの目が回りそうなくらい。
町田くんが見せたのは、魂の演技でした。
ずっと掲げてきたテーマ「ティムシェル=自分の運命は自分で切り開く」、それを体現するものでした。
ショートもフリーも強かった! 本当に素晴らしかった! いつだって強い気持ちが望む未来を引き寄せるのだと、町田くんに教えてもらった気がします。
フリーを終えたあと、町田くんの表情は明らかに変わりました。あのホッとしたような、何かから解放されたような表情が当時すごく印象的で、ずっと気を張ってたんだろうなあ、と感じるとともに素の表情が見られてうれしかったことを覚えています。
ショートの演技後は「オリンピックに行くのは僕だと、今でも信じています」と話していましたね。
強気の言葉ですが、自分自身に言い聞かせているようでした。
有言実行(時にビッグマウスとも言われる)は、ハイリスクハイリターン。
かっこいいし世間からの注目度は間違いなく上がるけれど、その分失敗したときのダメージも大きくなります。
怖かっただろうなあ。
それでも自分を奮い立たせて、本当に実行していく姿には、もう尊敬の念しかありません。
フリー後のインタビューは、「これまで努力してきたことが報われた気がします」と。そう思える演技ができたことは、本当に良かったですよね。
表彰式、メダルを見つめる様子がすごく嬉しそうで、町田くんを応援して良かったと心底思いました。
そして、町田くんの出場が決まった瞬間、私は人生初のフィギュアスケート観戦を決意し、世界選手権男子ショートのチケットを取りました。
どうしても、どうしてもエデンの東を生で見てみたかった。
いやもう、今考えるとよくやった!!って感じですよね。(笑) 間違いなくスーパーファインプレーですよ!

全日本のエキシビションはラスト公演となった『白夜行』。
しかしご存知の通り機材トラブルで放送ならず……。仕事でリアルタイムは無理だとわかっていて、録画を楽しみにしていた私はそれはもう大暴れでした。(頭の中で)
後日、CSでラストシーンが抜けたものの放送されたことでなんとか救われましたが、非常に悔しかったですね。(笑)
スケアメ版
https://youtu.be/yCDkhcQMvBM
全日本版
https://youtu.be/_w_vIGTFwz8
初の自作ということですが、この頃すでに町田くんは自分のフィギュアスケーターとしてのキャラクターを知り尽くしていたんだなあと思います。
美しくも切ない音楽と、町田くんの動きがこれ以上ないくらい合っていて、突き刺すような痛みを与えてくるプログラム。ミスはあるんだけれど、この不完全さが作品のもつ苦しみを表現しているようで、逆に完成度を上げている気がします。
罪に染まった赤い左手や純粋さを表すような青い衣装が、演出として本当に素晴らしい。
大好きな作品です。

こうして掴み取ったオリンピック。
もう感情がジェットコースターのようでしたよ!(笑)
向こうのリンクで練習時に壁にぶつかって膝を負傷したというニュースが入ったときは、本当に血の気が引いたなあ。
なかなか続報がなかったから気が気じゃありませんでした。
もう不安で不安で!
でも本人は気丈に振る舞っていましたね。ここまできたらどんなことがあろうとやるしかないと、覚悟を決めていたんだろうなあ。
何の因果かショートは最終滑走。
深夜、祈るような思いで見守ったこの演技、未だにリアルタイムの1回きりで、見返すことができていません。(笑)
いやー悔しかった! 悔しくて悔しくてたまらなかったですよ!!
エデンへの思い入れはファンにも痛いほど伝わっていましたから。
オリンピックで、しかも得意のルッツでの失敗。
順位ほど点数は離れていなかったですが、本人さぞかし気落ちしてるだろうなあ、と思うとインタビューを聞くのが怖かったです。
そこで飛び出したのが「逆バレンタインできるように頑張ります!」ですからね。
テレビの前でひっくり返りそうになりながら、思わず笑ってしまいました。
でも、このインタビューにすごく救われたんです。
たぶん町田くんだって、悔しくてたまらなかったと思います。それこそ眠れないくらい。
でも、インタビューで明るく前向きな言葉を発してくれた。
嬉しかったなあ! おかげで私も前向きになれました。なんて素敵な人なんだろうと、本当に思いましたよ。
そしてフリー。
もう意地の演技でしたね。冒頭の4Tで転倒があったけど、そのあとはグッと堪えて、絶対に倒れないという気持ちを感じました。
今見ると良い演技なんですよね。
強かった、けどあと少し、ほんの少し届かなかった。
ショートでルッツが決まっていれば、フリーの4Tで転倒しなければ……何度思ったかわかりません。
でも勝負の世界で「たられば」はご法度なんですよね。そんなこと言い出したらどの選手だってきりないし。(厳しい世界だなあ……)
大西先生は「ようやった!」「頑張った!」って演技を終えた後、ずっと言っていましたね。
きっと、この演技に対してだけではなく、一緒に戦ってきたここまでの道のりに対して、そんな言葉をかけたんじゃないかな。
トータルの結果は5位入賞。
目標まで、本当に惜しかったけれど町田くんはオリンピックで素晴らしい成績を残したと思います。
ここでエキシビションが決まって、めちゃくちゃ嬉しかったですよ!
白夜行はもうないとわかっていたから、このときからファンは何やるのかなーなんてみんな予想したりして。
だからショーの練習でエアギターの情報が入ってきたとき、飛び上がるほど嬉しくて「ヤッター!」って感じでした!
ずーっと、オリンピックで見たかったプログラム。
ショートともフリーとも全く違うキャラクター。
『Don't stop me now』
https://www.gorin.jp/video/4902637638001
好きで好きでたまらない作品です。
落ち込んだとき、つらいとき、いつも力をもらいました。
笑顔になれるんですよね、すごく。
楽しくてハッピーで、元気でエネルギッシュで……でも夢の終わりは切なくて、ちょっと寂しい。
リンクの上をすごいスピードで激しく滑っていくのに、最後は長いイーグルで締めるのがおしゃれ。
ラストのポーズ、メガネとマフラーをつけ直して、冷えた手を擦りそっと空を見上げる。
この物語の余韻がたまらないんですよね。
オリンピックの舞台で、このプログラムを見れたときの感動を言葉で言い表すことはすごく難しくて。
ただただ、この上ないほど幸せな時間でした。

オリンピックから約1ヵ月後、さいたまスーパーアリーナで世界選手権が開催されました。
町田くんにとっては、オリンピック同様に初めての舞台。
私にとっては、初めてのフィギュアスケート生観戦。
男子ショートプログラム、この日首位に立ったのは町田くんでした。
エデンの東
https://youtu.be/lI3XASJeZAI
私がいたのは500レベルだったかな。
もっと近くの席を取ればよかったと、後からどれだけ悔やんだことか!(笑)
でも、同時にこの日のチケットを取った自分をずっと褒めたたえると思います!
リンクからはすごく遠かったですが、演技の素晴らしさは間違いなく届きました。
体が震えるようなスタンディングオベーション
あの日、さいたまスーパーアリーナは揺れました。
エデンの東は、町田くんのこだわりが詰め込まれたプログラム。
町田くんそのものだと言っても良いかもしれません。
美しく伸びていくスケーティングに、高く綺麗なジャンプ、喜びや幸せがにじみ出るようなステップ。
両手を伸ばしてリンクの中央へ走っていく姿が好きです。
なんというか、この作品、動きが全部つながって見えるんですよね。ジャンプの助走すらも。
幸せな風を感じるプログラム。
この日見た光景は決して忘れません。

フリーは2年間、ともにあり続けた『火の鳥』。
https://youtu.be/F5SivSExnTE
強かった。本当に強い火の鳥でした。
緊張はあったと思います。でも倒れない。
いつかのインタビューで「一度死んで再生した」と言っていた火の鳥
この日はその「再生」が見られたと思います。
再び甦った火の鳥は、力強くて美しかった!
初期の衣装だったのも嬉しかったですね。
当時は、もうただただ祈る想いでテレビの前で拳を握っていましたが、こうして見るとすごく感慨深い気持ちになります。
エデンと並ぶ町田くんの代名詞が、このときついに完成したんだなあと。

結果は世界選手権銀メダル。
1年前は何もかもが遠かった。
だからこそ、血のにじむような努力でここまでたどり着いた町田くんを誇りに思ったし、心から拍手を送りました。
エキシビションは前シーズンのプログラム『ロシュフォールの恋人たち』。
https://youtu.be/p-BrA8yZI1M
ドラマチックな音楽と町田くんの踊り心が存分に堪能できる作品。
ジャンプのキレとスピンのときの魅せ方、ステップワーク、ラストのポーズなど、好きなところを言い出したらキリがなくなっちゃう!
シンプルなシャツだからこそ、美しい背すじと身体の使い方に自然と目がいきます。
頻繁に変わる曲の展開の表現が、本当に巧みなんですよね。
なんかこう、良いお酒でも飲みながら見ていたいプログラム。
世界選手権での演技は笑顔も見えて、特に素敵でした。

激動のオリンピックシーズンを終えて、私はもっと町田くんの演技が見たいという思いからアイスショーのチケットを取りました。
これがプリンスアイスワールドとの出会いです。
PIWの思い出はまた別の機会にしたいと思いますが、競技ではない生のショーはすごく新鮮な気持ちになりましたね!
そこで披露されたのが、2作目のセルフコレオプログラム。
『Je te veux』
https://youtu.be/z5AS_Ixzmbw
個人的にはカサブランカの系譜のように感じています。
お洒落で軽快なんだけど、切ない愛情を感じる作品。
踊るようなステップとターンが見事で、うっとりしちゃいます。
ジャンプも軽やかですよね。曲想にすごく合ってると思います。
レイバックスピンもこのプログラムからかな。
すごくサラッと滑っているように見えるんだけど、所々のタメが効いててちゃんと印象に残ります。
恋人のスカーフとともに踊る場面は寂しいけど美しくて、ラストシーンに温かな余韻を感じられます。
セピア色の照明も素敵でした。

そうして、本物の自信を手に入れて臨む2014-2015シーズン。
極秘プログラムだったから、ずーっとヤキモキしてたなあ。
早く見たくてたまらなかったスケートアメリカ
ショートもフリーも圧巻の演技でしたね!
ショートは『バイオリンと管弦楽のための幻想曲』。
https://youtu.be/chMh2Av57KI
ミルズ先生と町田くんのプログラムは、スタートのポーズ、動きの一番最初から人を惹きつける力をもっていると思います。
全身からあふれ出る悲しみの旋律。ジャンプの直後の振り付けやスピンのつなぎの動きにも、感情表現のこだわりが見て取れます。
ステップの上半身のムーブメントが本当にすごい!
あれだけのことをしながら、足元がブレずに踊れるってどうなってるんだ……。
そしてルッツの位置が鬼!(笑)
バシッと決めて、即座にスピン、ラストの決めポーズ! 最高!
なにより驚いたのはこれが初戦ってことですよね。
とんでもないクオリティにただただ衝撃を受けました。
そしてフリーは『交響曲第九番』。
https://youtu.be/0pTOCwLY2Vg
町田くんの演技は凄く雄弁で、この演技を見ると「極北」という言葉の意味がなんとなく理解できる気がします。
ジャンプも素晴らしいし、作品としてこのプログラムがとても好きですが、特にお気に入りを挙げるなら3S-ステップ-3Loの一連の流れです。
どこも途切れないんですよね。音楽との調和が見事というほかありません。
壮大なコレオシークエンスから、空を仰いでルッツ! 位置が鬼!(笑)
そしてスピンの後、高く天に手を伸ばすようにしてフィニッシュ! 凄い!
この演技で、町田くんはスケアメ連覇を果たします。
本当に素晴らしいシーズンのスタート。
夢のような時間でした。

でも、町田くんはこのときよりずっと前から、自分の将来を考えて動いていたんですよね。
フランス大会、グランプリファイナル。
本調子ではなさそうな演技を見つつも、私はまだ気づこうとしていませんでした。
もしかしたら、自分の頭のどこかにはあったかもしれません。
全日本へかける想い。第九というプログラムを選んだ意味。たぶん考えないようにしていたのかも。

年末の全日本。仕事で見られなかったので、情報をシャットアウトして、帰宅してからショートを見ました。
最終滑走。気迫のこもった演技でした。スケアメのとき以上に感情がほとばしっていて、心を動かされるものでした。
本当に良い演技だった。
だからお辞儀のときに感極まったような表情を見せている町田くんを見て、「ああ、良かったなあ」なんて普通に思っていたんですよね。
今ならリンクから上がった後、氷上の光景をじっと見つめる姿の意味もわかるのに。
フリーの演技は、テレビの前で見ていました。
1番印象に残ってるのは、やっぱりステップのときの表情かな。このプログラムを演じるとき、ステップの場面の町田くんはいつも幸せそうなんですよね。全日本での演技は、特にその表情が心に残りました。
最後のルッツを決めて、スピンを終えてポーズを取ったあと、町田くんは納得したような顔に。
なんかもう、やけに爽やかなんですよね!
インタビューも、「悔いはない」「思い残すことはない」「出し切った」なんて言葉が並んでるし。
それでも4位になって、世界選手権代表に選ばれたから、あー良かったってホッとしちゃいました。
テレビはそこで中継が終わってしまって、現地の人の話や各専門誌のつぶやきをツイッターで検索してたら、引退宣言でしたからね。
驚きと衝撃と受け止めきれない気持ちとでぐっちゃぐちゃ。
でも、心のどっかで「やっぱりかあ」と思ってる自分もいて、すごく複雑だったなあ。
たくさん泣いたし、嫌だーって気持ちもあったし、世界選手権にも出てほしかったし、もう言い出したら止まらなくなる。
あれから5年近く経った今でも、第九の完成を見たかった気持ちはなくなりません。たぶん、それはもう一生。
でも、結局私は町田くんのファンだし、何より運命を自らの手で切り開く姿に励まされてきたから、その決断を心から応援したいと思いました。
最後のエキシビションは生放送。
エデンの東celebration~Je te veux』
https://youtu.be/viV8Ck9GgEw
最初から最後までずーっと幸せそうでしたね。
ミルズ先生からの祝福のプログラムは、町田くんの新たな門出の祝福になり、恋の別れを描いたプログラムは、町田くんの競技人生に別れを告げるものになりました。
でも、スカーフから顔を上げた町田くんの表情はその別れが悲しいものではないことを物語っていましたね。

大きな怪我によるものではなく、不本意なものでもなく、自分の意志によって引退を決めることができた町田くん。
「本当に、良い競技人生でした」と言っていました。
応援してきた選手がそう思って悔いなく引退できることは、ファンにとっても本当に幸せなことです。

ほんの3年弱でしたが、町田くんの競技人生を応援できて良かったです。
今、その時間を振り返ってしみじみと感じるのは、町田くんって良いスケーターだなあ、ということ。
トップアスリートとしての能力と持ち得る表現技術を使って、作品を練りあげる。
そこには競技者としての葛藤やこだわり、プライドもあって、苦しんだ時間も長かった。
決して順風満帆ではなく、輝けたのは一瞬だったかもしれない。
でも、だからこそ彼の努力が報われたときは嬉しかったし、そんな町田くんはすごく応援しがいがあって、ジェットコースターのような日々も楽しかったと思えるんですよね!

逆境の中、町田くんは自分の力で運命を切り開きオリンピックへたどり着きました。
彼の懸命な姿は、間違いなく多くの後輩スケーターたちの道しるべとなったはず。
町田くんの競技人生が残したものは本当に大きく、それを受け継いでいる者たちの存在を、今強く感じています。

ということで、ここまでが選手編です!(笑)
ものすごく長くなっちゃいましたね。
でも……もうちっとだけ続くんじゃ。(次回、プロ編へ続く……)