はまはらのフィギュアスケート感想記

フィギュアスケート観戦が趣味です。大好きな選手のこと、観戦の感想などを書いていきます。特に好きなスケーター☆宮原知子さん/町田樹さん/ネイサン・チェン選手/鈴木明子さん/エリザベータ・トゥクタミシェワ選手…他多数

心震わす瞬間を(スケートアメリカの感想)

こんにちは。はまはらです。

相変わらず不定期更新のブログですが、見にきてくださってる方々、どうもありがとうございます。

さて、グランプリシリーズ初戦スケートアメリカ、いよいよ2021-2022シーズン​──すなわちオリンピックシーズンの本格的な幕開けです。
正直心臓が痛いし怖いしどんな結果になっても泣くことが決まってるんですけど、頑張る選手たちから目をそらさず応援し続けたいと思います!
というわけで、さっそくスケアメの感想を……といきたいところなんですが色んな選手の話をしても物凄く内容に偏りが出そうなので、ある程度選手を絞って書いていきます。

コロナ禍ということで昨シーズンよりは緩和されつつも、まだダンボール?パネル?の観客も目立つ2021年のスケアメ。
でもやっぱり有観客はいいですね。
私はアメリカのお客さんの雰囲気が大好きなので、いつもよりは控え目でも時折歓声が聞こえるとワクワクしながら「これ、これ」みたいな気持ちで見ていました。
お客さんの前で滑る選手たちも、なんとなくみんな心なしか嬉しそうに見えたなあ。

さて、まずはペア! りくりゅうこと木原くんと璃来ちゃん、大大大大大快挙です!!!!
GPSで見事銀メダル! ロシアの強豪チームに割って入りました!凄すぎ!!!
SPの後のインタビューでは「名前を売りたい、まだまだ足りない」と言ってたけれど、この結果は世界にりくりゅうという強いペアがいるというこれ以上ないほどのアピールになったんじゃないかな。
そもそもSPもFPもめちゃくちゃ良いんですよね。
ハレルヤは爽やかで優しくて温かい2人の雰囲気が良く伝わってくるし、Womanは絆の強さを感じられた気がします。
特に今回、FPでスロージャンプの転倒という大きいミスがあったにも関わらず、崩れないどころかお互いを心から信じて笑顔で滑る姿に感動しました。
木原くんの笑顔がまたあったかくて本当に優しいんだ……包容力の塊だったよ。
「大丈夫だから」って声が聞こえてきそうな表情をしているように見えて、木原くんはたくさんの経験を積んでこんなにも頼もしいペア男子になったんだと思うと涙が出っぱなしになりました。
璃来ちゃんのハートの強さも凄かったですよね。
あの転倒、本当に痛かったはず。膝を強く打っているし、壁に頭もぶつけていたように見えたのに、立ち上がってスピンをし、3サルコウやスロージャンプを決めていくガッツが見事すぎ! なんて強い選手なんだろうと尊敬の思いしかないです。
見ている人にエネルギーをくれる2人の演技でした。
インタビューからも関係の良さが伝わってきてほっこりしました。
おじさんと少女は笑うけど、9歳差の2人がとにかくいいペアなのは伝わってきました!
あ、足の下くぐってお姫様抱っこしてからスロージャンプに入る流れ、最高すぎて大好きです! みんな好きでしょ? わかる!!!
あと2人ともスケーティングめっちゃ上手いよね? スピード半端ないしローテーショナリリフト(であってるかな?)の移動スピードも速すぎてスゲー!ってなりました。
イーグルのときの木原くんの笑顔と璃来ちゃんのミディアムヘアがなびくとこも好き! アジアンビューティーな黒髪が美しすぎて憧れちゃう!
ラストポーズも曲に最高に合ってて良かった! コレオの盛り上がりからジャン!で鳥肌ヴァーってなった!(語彙は死んだ)
好きなとこを語り出したらきりがなくなっちゃうのでここまでにしときます。
りくりゅうの次の試合も楽しみ!

お次は男子。
ヴィンス優勝、昌磨くん2位、そしてネイサンが3位というのはちょっと予想をしていなかった結果でした。
ネイサンがミスをするところを見たことがないわけじゃありません。ついこないだの世界選手権だって、ショートは出遅れていましたからね。
でも、だからこそSPが終わったあとネイサンが「I'm human」言うたところで、「そうだよね……ネイサンだって人間だよね」とわかりつつも正直内心では「とか言いながらフリーでまくるんでしょ知ってる知ってる」って思っていたんですよ。
マジであさはか。ネイサンに謝りたくなりました。
まあそれだけネイサンに対して絶大な信頼を持っていたんですよね。
だからFPの前の6分間練習で、見たことがないくらいナーバスになってるネイサンの姿に物凄く動揺しました。
ジャンプは抜けるし、イライラしたように頭をかいている様子を見て、「あ、あれ?」と思ったんですよ。
実際、6つの4回転のうちルッツとサルコウが抜けて、3連続の最後も2フリップになってしまいました。
これは、あくまでも自分の勝手な推測に過ぎないんですが、ネイサン、五輪シーズンの初戦ということでかなり気負っていたんじゃないかな。入れ込みすぎていたのかも。
優勝候補筆頭と言われた4年前の大きな失敗、そしてそれからずっと勝ち続けて、五輪の忘れ物を獲りにいく今シーズン。意識するものは当然あるし、人一倍プレッシャーもかかっていたはず。
それが緊張につながって常にない演技になった……そんなふうに考えています。
そもそも、ここまで3年と8ヵ月、ずーっと勝ち続けることがすでに半端ないことなんですよね。
同じタイミングでやっていた世界体操を見ていたら、テレビのインタビューで、五輪金の橋本選手が「勝ち続ける選手になりたい」と話していて、それに対して内村選手が「(勝ち続けるのは)地獄だよ」といったことを言っていました。
勝ち続けてきた人にしかわからないとてつもないプレッシャーを表したその言葉がすごく印象的で、心の中に残っています。
もしかしたらネイサンは、今回のスケアメでその地獄から少しだけ解放されたのかも。そう思うと、ここでの経験はきっと次につながる気がするんです。
実際のところはわからないけれど、ただ言えるのはネイサンは聡明な人だから、この先自分自身の感情と向き合って反省して活かしていくと思うんですよね。
だから……まだ心配だし不安もあるけれど、糧にするって信じています!
プログラムの感想としては、まだ語れるほどの材料が揃ってない状態だと感じています。
SPもFPもパフォーマンスの出来で印象が大きく変わりそうな感じ。
ただショートのエタニティとネメシスは、ノーミスでいけば相当盛り上がるんじゃないかな。
ネメシスのカッコよさと前奏部分のワクワク感は相変わらずだし、エタニティも前半部分の振り付けが特に素敵だと感じました。
ネイサンの華麗な身のこなしと巧みな身体表現が見られるのが嬉しいな。
ただ滑っているという部分はほとんどないように見えたので、ラストジャンプの前の歌声のロングトーンの部分の空白が埋められれば、かなり密度の高いプログラムになるんじゃないかと思っています。
エタニティとネメシス、SPに2つの曲を入れるのは実際リスキーだと思うけど、これらの曲の違い・緩急をうまく使ってもっともっと魅力的なプログラムにブラッシュアップしてほしいと願ってます!
フリーはまだ保留かなあ。良い演技ができたときに、あらためて噛み締めたいと思います!
ネイサンはすごく悔しかっただろうし、ショックを受けたかもしれないけれど、最初に決めた4Loは綺麗だったし、コンディションの良くないなか、逃げずにMAX構成に挑んだネイサンは本当に凄い人だと思いました。好きだ!!!
表彰台では表情が凍っててつらい……ってなってたけど、エキシビションに駆けつけてくれたベルたそがネイサンを笑顔にしてくれて良かったです。
ベルたそマジ天使!持つべきものは心の友!親友!ありがとうベルたそ!!!
エキシはなんか吹っ切れた感じで良かったなあ。氷の上をまるで陸上みたいに縦横無尽に駆け回って自由に踊り滑る笑顔のネイサンが見られて幸せでした。バックフリップサンキュー!!

そして女子。トゥルソワ、ウサチョワ、ユヨンの3人がメダルを手にする結果でした。
今回初見の中だと、ウサチョワのSPがお気に入りです。
「Never Enough」がめちゃめちゃ良い曲で盛り上がる分、ミスしてしまうと大変なことになってしまうリスクがありましたが、きちんと盛り上げるべきところで盛り上げる、曲に負けない演技なのが良かったです。
表情はどこまでもキラキラしていて、軽やかで大きなジャンプも回転が速く美しいスピンも、溌剌としたステップも素敵でした!
なんとなく少し前のアリサ・リウに近い雰囲気に感じました。
このハマりプロとともに良い成長をしていってほしいな。

知子ちゃんはSP、FPともに道が開けたような、トンネルを抜けたのを感じられる演技だったと思います。
ショートを滑る直前、スターティングポジションについたときの知子ちゃんの表情が「あ! 良い顔してる!」って感じだったのでドキドキはしていましたが見ている側として不安はあまりなかったですね。
実際、知子ちゃんも久しぶりに楽しく滑れたと話していたし、ポジティブな言葉がたくさん聞けて嬉しかったです!
メンタルの安定というか、充実していることがわかったので良い調整ができてるんだなあとすごく安心しました。

屈指の名作の呼び声高い小雀に捧げる歌は、知子ちゃんの可憐さや透明感が輝くのと同時に、ハッとするような大人の女性の美しさや重ねて来た年数の重みを感じられる味わい深い作品。
壁に貼られたスポンサーの看板が見えなくなるほどのスケーティングのスピードは、まるでその人生が過ぎていくあっという間の儚さを表しているよう。
その儚さの中だからこそ知子ちゃんが見せる多彩な表情とムーブメントの数々は際立って見え、見るものを虜にしていきます。
ステップシークエンスのところでツイズル前に両手を天に突き上げてからニースライドするシーン。あそこに凄く悲哀のようなものを感じるんですよね。最高に好きな場面。
ひとりの女性の、激動の人生の映画を見ている気分になるプログラム。完成度の高さが素晴らしかったです。

そしてFPのトスカ。今日の朝起きて一番に見た知子ちゃんの演技、涙なしには見られませんでした。


号泣しながらツイートして慌てて朝の準備をしました。
でもこんな幸せな気持ちで仕事に向かうこともなかったかもしれません。
それくらい胸を打たれる、素晴らしい演技でした。
少しだけ点数の話もします。
こんなに素敵なのに、こんなにたくさんの人たちが心を動かされてるのにどうしてって気持ちが、まったくないわけじゃないんです。
本当はもっと表現技術や芸術性を評価してほしいし、されるべきなんじゃないかって思うことがある。
でもやっぱり自分は素人だから、資格を持ったプロの審判がつけた点数にあーだこーだ言えないし言いたくない。
ただ悔しいのは、このあと結果だけを知った人が知子ちゃんの演技を見ないかもしれないってこと。
順位や点数を見て「あ、いい演技じゃなかったのかな」と思われるのが一番悲しい。
そうじゃない。知子ちゃんの演技は、フィギュアスケートの演技は、点数も大事だけど点数に反映されないこともある。
リザルトに載っていない感動はいろんなところにあるって声を上げて伝えたい。
観衆の反応を知ってほしい。多くの人たちが立ち上がって喝采を送った事実がそこにあったんだ。それは点数が上書きできるものじゃない。
そんなふうに思うんです。
でも今の自分にできるのは、知子ちゃんの演技がどれだけ最高だったか伝えること。
なのでトスカの好きなところを挙げていきますね。(まあ全部好きなんだけど)
まずスタートのポーズ。ゆっくりと腕を顔の反対側に持っていく、あの一連の動きだけで一気に作品世界に惹き込まれていきます。
遠くを見つめるような澄んだ瞳も美しくて、アリアが始まる前から追憶の匂いを感じさせます。
冒頭のスパイラルも綺麗。あの姿勢でスピードを抑えて弧を描くの、知子ちゃんは簡単そうに見せるけど難易度高いんじゃないかな。
振り付けの一部のようにステップから片足のまま跳ぶ2Aも見事。ループのあとの膝をついて天を見上げ、それからスピードに乗ってコレオシークエンス。
スパイラルは美しいアリアの旋律に乗って。つい笑みを浮かべたくなるシーンだけど、「歌に生き、愛に生き」は神に信仰を尽くして生きてきたにも関わらずひどい仕打ちを受けたトスカが今を嘆くような場面の歌なので、知子ちゃんの表情はどこか寂しい瞳のまま。曲の解釈が素晴らしすぎてこの場面だけでもう涙が出る。
キャメルスピンの終わり際に鐘が鳴って、倒れ込みそうになり頭を抱えるようにして立ち上がり、悲しげな表情で手を伸ばしながら歩みを進める。
この演出は、最初見たときにとても驚いたのを覚えています。心情が痛いほど伝わってきて、切なさでこちらまで苦しくなる感じ。
そして2A-3Tが終わったあとは、何かとてつもないことが起こってしまうことを予感させる動きに、心がざわめかせられる。
運命にもがき抗う姿が克明に描かれているステップは、息を忘れさせるほどの迫力を持っていました。
鬼気迫る表情に会場全体が飲み込まれているようで……画面越しでも圧倒されました。
トスカは飛び降りることで自らの命を絶つけれど、殺されずに死ぬことが最後の彼女の意地のようにも思える。
知子ちゃんのレイバックスピンと、片手を胸に当てもう片手を広げるラストポーズは「これが自分の生き様だ」と見せつけているように見えて、誇り高いトスカの最期ともつながる気がして凄く好きです。
レイバックスピンから歓声と拍手が鳴り止まず、そのままスタンディングオベーションになりました。
知子ちゃんはスケアメの会場を劇場に変え、アメリカの観客は知子ちゃんの演技に熱狂していました。
この光景を見て、私はやっぱり知子ちゃんを好きで本当に良かったと思ったし、フィギュアスケートのファンで良かったと心から思いました。
今日ここで知子ちゃんからもらった感動はずっと忘れずにいたい私の大切な宝物。これからも大事に大事に胸に抱いていきます。

心震わす瞬間を味わえる喜び、幸せ。それが自分がフィギュアスケートを見る理由。
スケアメはそれを思い出させてくれた大会になりました。