はまはらのフィギュアスケート感想記

フィギュアスケート観戦が趣味です。大好きな選手のこと、観戦の感想などを書いていきます。特に好きなスケーター☆宮原知子さん/町田樹さん/ネイサン・チェン選手/鈴木明子さん/エリザベータ・トゥクタミシェワ選手…他多数

ロケットマンが飛ぶ理由(北京五輪:男子の感想)

こんにちは。はまはらです。

北京五輪が始まり、熱戦が続いています。
一昨日男子フリーが終わりました。
本当は全種目終わってから感想を書こうかなと思っていましたが、鉄は熱いうちにってことでこのタイミングで記事を上げておきます!

東京五輪に続き異例づくしのオリンピック。
コロナ対策で観客は関係者と招待客のみ。バブルシステムの中、毎日の検査、厳重なソーシャルディスタンスとマスクの着用。
試合とはまた別の緊張感の中で、選手たちのストレスは計り知れない状態です。
代表が決まっていたコリャダくんは直前で陽性となり出られず、現地で団体を戦ったヴィンスも個人戦の前日に陽性と診断され棄権となりました。
とても見たかった2人なのでほんとにショックでした。
特にヴィンスの報告のインスタは見てることができず、翻訳を読んで無念の思いにこちらも涙でした……。
ヴィンスは今シーズン本当に良い演技をしていたし、全米で見せてくれたSP「Vincent」がとても好きで五輪で見られるのをめちゃくちゃ楽しみにしていたので心の底から残念です。
ただ、エキシビションには招待されたので、そこで演技が見られることはせめてもの救いだし、ヴィンス自身も悔しくて仕方ないだろうけど気持ちがほんの少しでも救われたらいいなと思っています。

さて、男子シングルですが今回団体戦に出た選手にとってはマジで鬼スケジュールの超過密日程!(般若の顔で)
解説の町田くんも「可哀想なスケジュール」と言っていましたね。4年前からずっと選手の目線で団体戦個人戦の順番を入れ替えてほしいと言っていましたから、なんで変わらないんだという気持ちは強いと思います。
特に団体戦のSP・FPを一人で滑ったボーヤンとコンドラチュクは本当にお疲れ様という言葉しかありません。
ボーヤンなんか地元中国のたった1人の男子シングルの代表ですからね。プレッシャーは半端なかったと思います。(でも団体戦のキスクラのボーヤン超かわいかった!)
期待を背負って迎えた個人戦。ボーヤンは立派に戦いました!
高さのある4回転に加え、磨いてきたスピン・ステップのレベルもきっちり取って、自分のできる滑りをしようという強い意志が伝わってくる演技だったと思います。疲れていただろうに、フリーの演技は団体戦よりずっと輝いて見えました。
ボレロという選曲も、表現することへの挑戦なのかなと感じましたね。かっこよかったですよ!
表現者として突出していたのはやはりジェイソン。
SPのシナーマンは前のシーズンから継続して使用しているプログラム。「罪人」という意味で、歌詞の内容は罪人が身を隠す場所を探して逃げるがどこにも受け入れられず、神に救いを求めるというものですね。
疾走感のあるこの曲を歌うのはアメリカのジャズシンガー、ニーナ・シモン。(調べる前まで男性だと思っていましたが女性歌手なんですよね! 歌声がかっこよすぎる)
歌詞の意味を理解すると前半に何かから逃げているようなムーブメントが多様されていたり、後半になると救いを求めるように手を伸ばしていたりすることに気づきます。ラストのポーズもそうですね。力の限り天に伸ばした手はきっと掴んではもらえず、神からの救いは与えられない……そう思うと悲壮感のある最後ですが、ここがバシッと決まるからめちゃくちゃかっこよくて爽快感すら味わえるんですよね。
スピンに入る前のスパイラルのとことか大好き! SPなのにコレオシークエンスがあるかのような満足感が半端じゃない。
FPのシンドラーのリストも美しいプログラムを存分に堪能させてくれましたし、今回のジェイソンはオリンピックの緊張感を感じさせない“らしい”滑りをしていたと思います。
どうしても高いジャンプ技術を求められる男子シングルでトップに行くのは難しい立ち位置ですが、「これぞフィギュアスケート」という技術と芸術が完全に融合した作品を作り上げるジェイソンの存在は、このスケート界で間違いなく宝物。これから先もずっと見ていたいと思う表現者です。

次はメダリスト3人。
昌磨くんは怪我を抱えながら団体戦個人戦と戦い抜きました。とても立派でしたよ!
団体戦ではSPでいきなり自己ベスト更新。もしかしたらチームのためだと思うと一番頑張れる人なのかもしれないなあ。
個人戦のSPでは、団体戦で見えた課題を修正し、更新した点数のさらに上を出しましたね。本当に一戦ずつ学び、強くなっていく選手なんだと感じました。
FPは限界への挑戦。ボレロの壮大なメロディーに乗って一切の妥協なく滑りきりました。
シーズン序盤は、曲の解釈も含めて難プロすぎるのでは……? と思っていましたが、昌磨くんならではの滑りで見事に自分のものにしていましたね!
今回の演技は手に汗握りながら見ていて正直全く気が休まることはなかったし、失敗はいくつかありましたが、圧のあるスケーティングは最後まで失われることなく、力強いステップにも胸を熱くさせられました。
最初の4回転ループも綺麗に決まってましたね。
トップと戦うことを目標に高難度プログラムと向き合った経験は絶対に次に生きるはず!
素晴らしい銅メダル獲得だと思います。
私は昌磨くんのインタビューがすごく好きなんですよね。飾らない言葉で正直に自分の気持ちを伝えてくれるところとか、どこまでも前向きなところとか。
あとめちゃくちゃ謙虚ですよね。
昌磨くん自身は「トップ層と争える位置に戻ってこられて良かった」と言っていましたが、あくまでも個人的な感覚ですけれど昌磨くんはずっとトップ層にいたと思うんです。
確かにこの4年間山あり谷ありで大変な時期もあったし好不調の波も経験したと思います。
それでも、いつだって挑戦し続けていたし、レベルの高い滑りをしていたのを見てきましたからね。
でも昌磨くんがこの成績を機に自信をつけられたとしたら、それでいいのかもしれません。
地に足がついている彼は、4年前からオリンピックを特別なものとは考えずに他の試合と同じようなマインドで臨んでいるようでした。
ひたすらに「成長したい」「強くなりたい」と願い、そして「優真くんに置いていかれないように」「ネイサンのような選手になりたい」といった言葉が今回とても印象的でした。
後輩にたくさん刺激をもらって、目標をまっすぐに見据える。
彼の飽くなき向上心がきっとこの先も昌磨くんの背中を押して、どんどん強くなっていくんだと思います。

二位になった鍵山くんは、もの凄いスピードで成長を続けているのがハッキリとわかる戦いぶりでした。
ジャンプを始めとする技術の向上も素晴らしいですが、何より凄いと思ったのがハートの強さ!
団体戦のパーフェクトなFPと個人戦のSPでは、この大舞台を楽しんでいるのが目に見えてわかりましたよね。
団体戦のあとは「謎の自信があった」なんて話していましたが、自信を持って臨めたのは間違いなくそれまで積み重ねてきたものがあったから。
努力を積んで、きっちり結果を出して五輪の枠を掴んだというこれまでの経験が、鍵山くんに落ち着きをもたらしたのかなと思います。
個人戦のFPではほんの少し乱れがあったものの、高次元の滑りでプログラムをまとめ上げたのが見事すぎて本当に感動しました。
物凄く興奮したし、ラストジャンプの3Aのあとはもう泣きながら応援してましたね!
壮大なグラディエーターのメロディーをしっかり自分のものにして演じ切った姿に拍手を送るしかありません。
オリンピック初出場とは思えない堂々たる演技! 精神力の強さと演技の凄さに本当に胸を打たれました。
鍵山くんの滑りには人の心を動かす力があると、強く強く実感しました。
点数が出たあとは年相応のリアクションがめっちゃ可愛い! 隣に座るコーチであるお父さんとガッチリ握手したあとの不思議な踊りほんとすき。
そのお父さんは、得点が出たあと段々顔が赤くなって鍵山くんと目を合わせたら耐えられなくなったみたいに目を押さえてて……一番近くで息子が成長するところを見て、立派に戦う姿を見て、心の底から嬉しかったんだろうなあ。
親子でつかんだ銀メダル。こんな素晴らしい親孝行はないですよね。

そして、ネイサン。
五輪シーズンが始まって、見たことないくらいナーバスになっていたGPSスケアメ。
「あのときのこと、どう思っていますか?」
「なぜ失敗したと思いますか?」
4年前から、何度平昌五輪について尋ねられたことだろう。飽きるくらい同じ質問をされてきた。
どれだけ勝ち続けても世界選手権を三連覇しても、オリンピックのSPの失敗は永遠に残り続ける。
努力・練習・自信を積み重ねても、ずっとネイサンの心には拭いきれない悔しい過去があって、だからこそ、おそらく4年前よりも大きなプレッシャーがネイサンを襲っていたのだと思います。
スケアメで表彰台に上がったときの、凍った表情のネイサンを見るのは本当につらかった。
五輪の悔しさは、同じ舞台でしか晴らせない。
だから絶対にオリンピックでネイサンには力を発揮してほしかったし、彼自身がインタビューで言っていたように4年前は楽しむことができなかったオリンピックを、思い切り楽しんでほしいと願っていました。
初戦の団体SP、スターティングポジションについたネイサンの少しだけ硬くこわばったような表情。静かに二・三度息をついて緊張をこらえるような姿にこっちの心臓が口から飛び出そうだったけれど、見事に自分の演技を全うしてみせましたね。
五輪の舞台に帰ってきたネイサンが、心も強くなったんだと証明した演技だったと思います。
表情は、滑り終えた挨拶のときに一瞬緩んだくらいで、あとはほとんど変わりませんでした。
個人戦のためにその日のうちに練習に向かったというニュースには驚きましたが、同時にネイサンのオリンピックにかける想いの強さを感じましたね。
それは練習でもずっと医療用のN95マスクをつけているところからも……。

そして迎えた個人戦SP。表情はやはり緊張感漂うものでしたが、ラ・ボエームの曲が流れた瞬間にはもう入りきっていましたね。
このプログラムは緩急が効きまくってて、フリーレッグのつま先、指先、頭のてっぺんまで表現のために動いている感じがたまらなく好きです。
手を後頭部に当てたり、スピンの途中に胸に当てたりする仕草に哀愁と気怠い色気があって最高。
ワルツのように恋人と踊る姿は戻れない過去の回想なのかな。
ステップのところで片膝で手を伸ばしたり、激しく相手を求めるように走る姿が切なくて、かつての恋人を愛おしく思う気持ちも感じられます。
最後のコンビネーションスピンで何度も拳を握って、曲の終わりとともに両手をおろすところが大好き。
一瞬の間をおいて、ネイサンは右の拳を振り上げてガッツポーズを見せました。
驚くというよりも珍しく感情を爆発させたシーンに涙がこみ上げました。
そして、団体のときよりもはっきりとホッとしたような笑みでの挨拶。
とてつもない重圧の中で戦い、打ち勝って、自分の滑りをしてみせました。
4年分の想いがこもった紛れもなく魂のSP。熱くならないわけがない!
点数を見たあと、ネイサンは一瞬両手で顔を覆う仕草を見せました。
その一瞬の仕草を収めた写真の中のネイサンの表情は、感極まるようなもので……本当につらかった4年前の出来事が一つこうして報われたのかなと思うとこちらも泣くしかなかったです。
そしてネイサンは、額に汗を浮かべながら何度も何度もうなずいていました。自分の演技と点数を噛みしめるように。

それから中一日のFPは最終滑走。6分間練習でジャージを脱いだネイサンは真っ赤な宇宙の新衣装を身にまとっていました。
正直私は死ぬほど緊張していたんですけど、もうなんかある意味期待を裏切らないビッグバン衣装に微笑みが生まれましたね!笑
他の選手の姿をカメラが追っていても、真っ赤なネイサンが通り過ぎるだけで面白いんだから凄いよ。大好きだわ!
滑るのはロケットマン。ネイサンを大好きになったきっかけのプログラム。
滑る前の表情は、いつもどおり。あの2年前のGPFと同じように見えました。
序盤は「Goodbye Yellow Brick Road」。音楽にピッタリ合わせた4F-3Tにしびれました。
黄色いレンガ道に別れを告げて、宇宙へ飛び立つ4Lz。2シーズン前は3Aでしたね。前向きのジャンプの方が宇宙へ飛び込んでいく感じがして好きだなあと全米選手権のときは思っていましたが、今回は背中から跳ぶ大きなルッツジャンプも遠ざかる地球を見つめながら飛び立っていくようで良いなと感じました。
4Lzの助走に合わせるため曲を以前より長くしていて一瞬静寂が生まれるのも、よりその後の盛り上がりが際立つ感じがして好きです。
そしてステップ。「Rocket Man」のメロディーに乗って踊るこのシーンはプログラムのハイライト。
このブログでも語りまくってる通り、ネイサンのロケットマンは明るいんだけどどこか寂しくて宇宙に独りぼっちな切なさを感じるところが大好きなんだけど、今回はすごく喜びに満ちているように感じました。
それはきっとネイサンがこの舞台を楽しんでいたから。
笑顔でステップを踏み、宙に何度も手を伸ばす姿は、楽しくて嬉しくて仕方がないように見えました。
そんな様子を見ていたら、宇宙で独りきりで寂しいはずなのに、ロケットマンはなぜ何度も飛ぶのかという疑問の答えに出会えた気がします。
初めて宇宙へ飛び立った彼は、きっとそこでの体験が楽しくてたまらなかった。思わず笑みが溢れるほどに。また同じ気持ちを味わいたい……だから何度も行くんじゃないかな。
ネイサンがここへたどり着くまで、大変なことがたくさんあった。苦しいこともつらいことも。それでもまた五輪で滑るのは、スケートが大好きだから。大舞台を楽しみたいと願っていたから。
ロケットマンという曲の主人公とネイサンの姿が重なった時間でした。
笑顔で滑るネイサンの姿は、オリンピックで私が一番見たいと思っていたものだったので、もう涙が止まりませんでしたね。
ただただ嬉しかったです。
ラストの「Bennie and Jets」はゴキゲンに。このハードなプログラムの終盤を大きく盛り上げるコレオは何度見ても楽しいし、ネイサンのらしさが詰め込まれたムーブメントにワクワクさせられます。
最後のスピンでは拳を掲げ笑顔のフィニッシュ!
もうずーーーっと嬉し泣き!笑
こんな素晴らしい最高の演技をオリンピックで見せてもらえて、もうありがとうしかないです。良かったなあって気持ち、もうそれだけ。
本当に大きな、大きな幸せをもらいました。
点数が出たあとにはラファエルコーチと強く肩を組む姿に、この二人の絆の強さを感じ、また胸が熱くなりましたね。
幸せで嬉しくて……言葉にならないくらいの感動がある中、印象に残ったのはグリーンルームでソファに腰掛け、隣に座った鍵山くんと昌磨くんを称えたあとのこと。
マスク姿のまま激しく肩を上下させるほど荒い呼吸をしているネイサンが映し出され、ハッとしました。
高難度の技を組み込んだプログラムを、高い完成度で遂行してみせる。多くの人はいつものネイサン、安定したパフォーマンスと感じたかもしれないし、私もネイサンのその様子を見るまで嬉しい気持ちで浮かれていました。
でも、今回ネイサンは団体戦にも出て、さっきまで忘れていたけれどスケート靴を3つ用意するくらい靴にも不安があって、股関節の怪我も抱えていて、決して最高とは言えないコンディションの中で凄い演技を見せた。
想像もできないくらいの努力があって、力を振り絞って、歯を食いしばって戦った結果つかんだ金メダルなんだということを思い出させられました。
荒い呼吸のまま、小さくうなずいて額の汗を拭っていた姿を忘れずにいたいと思います。

試合が終わって、ビンドゥンドゥンセレモニーの前にはメダリストの三人が楽しそうに談笑していたのが癒しでしたね。
そうそう、ネイサンの演技が終わったあとは、グリーンルームで羽生くんを含めた日本の三選手が称えてくれていたんですけど、中でも昌磨くんが力強いガッツポーズと拍手を送ってくれて、その後のハグも含めて本当にネイサンのことが好きな気持ちが伝わってきてとても嬉しかったです。
その夜のメダルセレモニーでは、表彰台の真ん中で金メダルを受け取るネイサンの姿に万感の思いでした。国歌を聞いてそっと口ずさむネイサンの表情が、本当に嬉しそうで誇らしそうで、見ていてまた泣けてきてしまいました。
一番輝く金メダルがめちゃくちゃ似合っていましたね!

アメリカ国歌を聞きながら、ネイサンにつられて胸に手を当てているのは天然なのか敬意を評しているのかわからないけれど微笑ましい昌磨くんや、リンクサイドで超喜びながら顔を真っ赤にして祝福してくれたベルたそやミハル。
素敵なシーンがたくさん見られて、スケーター同士の絆や関係性にグッとくることも多かったです。

なんだか終わりのような雰囲気だけど、五輪は始まったばかり!
これからアイスダンス・ペア・女子の戦いが待っていますし、エキシビションもあります。
男子の戦いは本当に激しくて、1年分の涙を流したんじゃないかってくらい泣いたけれど、熱くて楽しくて、見ていてとても幸せな時間でした。
それぞれの選手が自分の目標のために挑戦し、思い切り戦ったことに拍手を送りたいです。
そしてネイサン、北京オリンピック金メダル本当におめでとう!
これからもずっと大好き!