はまはらのフィギュアスケート感想記

フィギュアスケート観戦が趣味です。大好きな選手のこと、観戦の感想などを書いていきます。特に好きなスケーター☆宮原知子さん/町田樹さん/ネイサン・チェン選手/鈴木明子さん/エリザベータ・トゥクタミシェワ選手…他多数

氷の上、無重力(今シーズンのネイサン)

こんにちは。はまはらです。

全日本の記事も書かず、全米の記事も書かず、世界選手権と国別が終わってしまいました……。
何を書いても今更な話になりそうなのでここはもう割り切って今シーズンのネイサンのプログラムについて、思いっきり語りたいと思います!

まず、純粋に凄いなーと思ったのがこの状況下でSPもFPも新しいものを用意してきたこと。
前のプログラムも最高だし同じやつでもまったく文句なんてなかったんですが、やっぱり新プロは嬉しい!
純粋にもうありがたやーって感じです。
特にネイサンは残された時間が少なそうだからね……。(歯を食いしばりながら)
もう一個一個の作品を噛みしめて味わっていく所存です。

さてSPの『デスペラード』ですが、カッコよすぎィィッッ!!
唐突に理性を失うレベルでカッコイイです。
世界選手権では思わぬ転倒でビビり倒しましたが、それでも後半に4F-3T決めるとこがネイサンがネイサンたるゆえんというか。強かったですね。
やはりベストパフォーマンスは国別かな。
冒頭の4F、スーパー軽やかでめっちゃ綺麗でびっくりしちゃいました。
というかジャンプのキレも良かったけどそれ以上に目を奪われたのが洗練されたアームスの動き。
うわああああああ美しいよおおおお!
初っ端からもう惹き付ける動きをしてるんですよね。何回見ても飽きない。
複雑で多彩だけど決して腕の動きのみに終始することなく身体全体が柔らかくてしなやかで、決めるべきところでビシッと絵になるポージング!美! ひたすらに美!
前々からネイサンの緩急の凄さには言及してたと思うんですけど、このプログラムも光ってましたね。
アップテンポな曲を引っ張っていくような、主導権を絶対に渡さないステップがめちゃくちゃ最高。漕がないのにぐんぐん伸びてくスケーティングが気持ち良すぎる。
タメのシーンでの表情とか視線とか肩の使い方がヤバい! こんだけやってわざとらしくならないとこがニクイなー。
さりげなくつなぎにイーグルを入れたり、ちょっとしたターンもお洒落でかっこいい。
最後のスピンも曲に合っててℓσνє……。
デスペラード、というのは映画のタイトル。和訳すると”ならずもの”です。(イーグルスの同名の曲もありますがそれとは違いますね)
ざっとあらすじを見ただけですが、なんとなくネイサンの演じてる男性像に納得しました。
特に序盤の曲調が変わる部分、キャメルスピンの後の歌が入るちょっと前から、すこーし悪い感じの笑みとともに踊り出すところなんか、根無し草なんだけどどこか品のある危ない男の雰囲気が出てるような気がします。
あーー最高のプログラムなのにうまく言語化できないの悔しい! 百聞は一見にしかずなので100回見ようぜ!!!(?)
衣装はシンプルイズベスト! 白のシャツに黒のパンツはデスペラードの主人公と同じですね。ハイ。ネイサンがこれが良いというのだから何も言うまい。似合ってるからヨシ!

FP『フィリップ・グラス メドレー』は間違いなく世界選手権がベスト。
引くほど号泣しました。
正直に言うと、シーズン序盤の初見時は単調で物足りない印象があったんですが世界選手権で大きく覆されましたね。
メドレーということもあって、曲の展開はだいたい4部くらいに分けられます。
最初のポーズは自らが差し出した左手を目を伏せて見つめるもの。この姿からなんとなく内省的な……自分の感情とひたすらに向き合い語り合うような作品なのだと想像ができます。
序盤は静かなピアノの音色から。細かい音を拾うというよりは、その中をたゆたうようにして滑り、高難度のジャンプを次々と決めていきます。
流れに身を任せるみたいな決して音に逆らわない身体の動きが美しく、緊張感のある曲の中でスパッと決める4Lzで一気に場を掌握するのを感じました。ルッツの前の助走がタメになってる分、決まったとき一瞬解放感が生じるのが好き。
管弦の音が入ってきて曲が変化したタイミングで入る4S。このサルコウの音楽との調和が素晴らしすぎて「うわあ」ってなりました。(マジで語彙がない)
サルコウの後、スピンに入る前に片足になって上体を反らす動きが入るんですけど、そこと弦楽器の音がめちゃくちゃ合ってて大好き。
物悲しくどこか寂しい音楽の中でのステップは、シルクの上を滑るようなネイサンの美しいスケーティングが映え、時折何かに縋るように伸ばされたり捨て去ることのできない想いを感じさせる腕の動きにはノスタルジックな気持ちにさせられました。
ステップを終えたあとは、序盤のリフレインに電子音が入ってきて一気に緊張感が高まるところで次々と繰り出される高難度ジャンプ!
ここのたたみかけが凄い! 技を決めるごとに鼓動の音が大きくなっていくように音楽もテンションを上げていって手に汗握りました。
ラストジャンプは3A! これをバシッと決めて始まる感情大爆発のコレオシークエンスが凄まじい! まるでここに至るまでが壮大な「タメ」だったかのようなカタルシス
表情も動きも何もかもが変わるんですよね。フラストレーションを吹っ飛ばす激しく熱い踊りに、これまでの静かな佇まいとの大きなギャップをぶつけられて見る者の心も強く強く揺さぶられました。
一番好きなところが迫るような電子音の中のイーグル!!!
このシーン超かっこいいんですよね!
ここまで激しく感情をぶつけてきて、ここで見せるこのクールさ! ヤバい!!!!
からのハイキック! からのスピン! スピン中の掲げられた拳! ラストポーズの宙で解かれ広げられる両腕!
完璧です。号泣です。
震えました。ちょっと一人暮らしで良かったと思えるくらい泣いてしまいました。
世界選手権という大舞台でこれほどの素晴らしい演技。なんという凄い選手だろうと、心から感動しました。
もう号泣からの放心状態でしたね。
会場にいた選手や関係者もスタンディング・オベーションでした。
生で見てみたかったけど見たらちょっと自分がどうなっちゃうのかわからないですね。怖い。
凄かったなあほんと。今書いてても泣いてしまうくらい。
想像を越えた人間の強さを圧倒的な力で見せられました。
強さっていうのは、単に勝ち続けるってことじゃなくて、極限の状況下で自分の最大限を発揮して人に大きな感動とか衝撃を与えられることというか……。
それはこれまで積んできた鍛錬や精神力の成せるものなんだろうけれど、いったいどこまで積み重ねればこの境地にたどり着くのか想像もできません。
見るたびに、ひたすら凄い人だと思わされる。
ただただ尊敬します。

昨シーズン演じたロケットマンと違ってこのフィリップ・グラス メドレーは初見だと解釈が難しいプログラムでした。
でも今は、自分の心の奥底で眠っていた感情と誠実に向き合い、対話していく過程で、その感情の大きさや重さ、複雑さに気づき、最後にはありのままを解放させる……という一連の流れを表現したものなのかなと自分なりに考えています。
静から動、冷静から情熱へ、ゆっくりと確実に表面化していき最後に爆発する感情を表したこの作品は、誰しも身に覚えがあるものだからこそ、こんなにも強く訴えかけるのかな。
と、まあこんな感じの解釈に落ち着いていますが、実際世界選手権の演技直後、一番印象に残ったのはコレオのときのネイサンの表情でした。
出遅れたSPから完璧なFP。
ネイサンの中にも想像ができないような重圧や複雑な感情があったはず。
そういうある種のストレスや不安のようなものを乗り越えてからの感情爆発コレオ。
あの瞬間は作品の表現とネイサン自身の状況と心が一致していたのかもしれないなあ。

最後に、久しぶりの転倒があった世界選手権のSPのあとのネイサンのインタビューについて。
「この機会に学び、前進できることが嬉しい」
ミスを失敗したという事実だけで終わらせず、糧にしてまた学べる。前へ進める。それが嬉しい。
ネイサンらしい凄く素敵なコメントだし、尊敬できるマインドだなと感じました。
フィギュアスケートだけじゃなく、人生にも言えること。
ネイサンマインドを忘れずに、自分もこの言葉を胸に留めておこうと思います。

最後の最後に、
ネイサン世界選手権三連覇おめでとう!!!
今シーズンも最高の作品をありがとうございました!